排煙ダクトは保温が必要?目的や主な保温材、注意点を紹介
排煙ダクトは、火災時に発生した煙を屋外へ排出するための重要な設備です。
排煙ダクトの保温の要否や仕様は、設置場所や設計条件などによって異なります。
本記事では、排煙ダクトを保温する目的や主な保温材、施工時に注意したいポイントについて紹介します。
排煙ダクトに保温は必要?

排煙ダクトは、すべての現場で一律に保温が必要になるわけではありません。
保温・断熱の要否や仕様は、法令上の構造基準や適用する仕様書、設計図書、特記仕様などを確認することが大切です。
屋内の隠ぺい部やダクトシャフト内、屋外の露出部など、設置環境によって求められる仕様が変わる場合もあります。
また、「ダクトを不燃材料で造ること」と「ダクトに保温材を施工すること」は同じ意味ではありません。
ただし、排煙ダクトは設置条件や設計上の防火条件によって、断熱措置が求められる場合があります。
施工前には、設計図書で以下についても確認しましょう。
- 使用する材料、厚さ
- ダクト周囲の納まり
- 防火区画との取り合い
- 支持方法
- 周囲の可燃物との距離
結露防止や温度対策を目的とする一般的な保温と、防火上求められる断熱を分けて考え、それぞれ必要な仕様を確認することが大切です。
排煙ダクトを保温する目的

排煙ダクトの保温は、単にダクト内部の温度を保つためだけに行うものではありません。
排煙ダクトを保温する主な目的は、次の通りです。
- ダクトから外部への熱の伝わりを抑える
- 結露を防ぐ
- 周囲の設備や建材への影響を抑える
以下からは、それぞれの目的について詳しく見ていきましょう。
ダクトから外部への熱の伝わりを抑える
排煙設備が作動すると、火災によって温度が上昇した煙や空気がダクト内を通ることがあります。
鋼板製のダクトは熱を周囲へ伝えやすいため、設置場所によってはダクト表面や周囲の温度が上がる可能性があります。
保温材を施工することで、ダクト内部から外側へ伝わる熱を抑え、周囲への熱の影響を小さくすることが可能です。
ただし、保温を行えば防火上の対策がすべて不要になるわけではありません。
ダクトの材質や周囲の可燃物との距離、防火区画との取り合いなどは、保温とは別に確認する必要があります。
施工前にはダクトだけを見るのではなく、周囲にどのような設備や建材があるのかまで確認したうえで、必要な熱対策を決めましょう。
結露を防ぐ
排煙ダクトは火災時に使用する設備です。
通常時も天井裏やシャフト、機械室、屋外などに設置されています。
通常時でも、設置環境によってダクト表面と周囲の空気に温度差が生じると、結露が発生することがあります。
たとえば、以下のような場所です。
- 外気の影響を受けやすい場所
- 空調された空間と非空調空間をまたぐ場所
- 湿度の高い場所
結露が発生すると、ダクトの腐食だけでなく、天井材のしみや周辺機器への水滴の落下につながるおそれがあります。
こうした場所では、保温材によってダクトと周囲との熱の移動を抑え、必要に応じて防湿層も施工します。
通常時の温度や湿度、設置場所、外気とのつながりなどを確認し、結露が起こりにくい仕様にすることが大切です。
周囲の設備や建材への影響を抑える
排煙ダクトの周囲には、次のようなさまざまな設備や建材が配置されることがあります。
- 給排水管
- 空調配管
- 電気配線
- ケーブルラック
- 天井下地
火災時にダクト表面の温度が上がると、近くにある設備や建材にも熱が伝わる可能性があります。
保温材を施工することで、ダクトから周囲へ伝わる熱を抑えられます。
ただし、一般的に保温材は必要な離隔や防火上の処理の代わりになるものではありません。
周囲の設備との距離や防火区画の貫通部、可燃物との位置関係などは、設計図書に沿って確認する必要があります。
また、保温材を施工するとダクトの仕上がり寸法が増します。
特に改修工事では、既存の配管やケーブルラックと干渉する場合もあるため、施工図を作成する段階から保温後の寸法を見込んで納まりを確認しましょう。
排煙ダクトの保温と耐火被覆の違い

排煙ダクトの施工では、「保温」と「耐火被覆」を混同しないことが大切です。
両者の主な違いは、次の通りです。
- 保温は熱の移動を抑えるために行う
- 耐火被覆は火災時に必要な耐火・防火性能を確保するために行う
以下からは、それぞれの役割について詳しく見ていきましょう。
保温は熱の移動を抑えるために行う
保温は、ダクト内部と周囲との間で熱が移動するのを抑えるために行います。
排煙ダクトでは、火災時にダクトから周囲へ伝わる熱を抑えたり、通常時の温度差による結露を防いだりする目的で保温を行うことがあります。
保温性能は、使用する材料だけで決まるものではありません。
保温材の厚さや施工範囲、継ぎ目の処理、施工時の圧縮などによっても変わります。
そのため、材料や厚さを一律に決めるのではなく、ダクトの設置場所や周囲の温度・湿度、必要な仕上がり寸法などを確認し、設計図書や特記仕様に沿って施工することが重要です。
耐火被覆は火災時に必要な耐火・防火性能を確保するために行う
耐火被覆は、火災時の熱から対象部分を保護し、必要な防火・耐火性能を確保するために施工するものです。
ここで注意したいのは、「不燃材料を使用していること」と「必要な耐火性能を確保していること」は同じではない点です。
たとえば、ロックウールなどの不燃性のある材料を排煙ダクトに施工していても、その材料や施工方法が設計上求められる防火・耐火上の仕様を満たしているとは限りません。
防火・耐火上の被覆として施工する場合は、材料の種類だけでなく、以下の要素も含めて確認する必要があります。
- 厚さ
- 固定方法
- 継ぎ目の処理
- 防火区画の貫通部
「保温材を施工しているから防火・耐火上の対策もできている」と判断するのは避けましょう。
排煙ダクトに使われる主な保温材

排煙ダクトの保温には、ロックウールやグラスウールなどが使われます。
排煙ダクトの保温で使われる主な材料は、次の通りです。
- ロックウール
- グラスウール
以下からは、それぞれの特徴と選定時に確認したいポイントを見ていきましょう。
ロックウール
ロックウールは、鉱物を原料としてつくられる繊維状の保温材です。
保温性や耐熱性があり、建築設備の配管やダクトなどにも使われることがあります。
排煙ダクトにも使用される代表的な保温材であるものの、ロックウールであればどの製品でも使えるわけではありません。
同じロックウールでも、製品によって密度や厚さ、使用できる温度、表面材などが異なります。
そのため、施工する際は、設計図書や特記仕様に指定された材料や厚さを確認し、使用する製品の性能と合っているかを確認することが大切です。
また、保温材だけでなく固定方法や継ぎ目の処理、外装まで含めて、指定された施工方法に沿って仕上げましょう。
グラスウール
グラスウールは、ガラスを細い繊維状に加工した保温材です。
断熱性があり、一般的な空調・換気ダクトなどの保温にも使われています。
排煙ダクトへの使用については、「グラスウールだから使えない」と一律に判断するのではなく、設計図書や特記仕様、使用する製品の性能を確認する必要があります。
特に確認したいのは、以下の点です。
- 使用できる温度
- 保温材の厚さ
- 表面材
- 防湿・外装の仕様
排煙ダクトでは火災時の使用条件も考える必要があるため、一般的なダクト用製品だからという理由だけで使用を決めるのは避けましょう。
ロックウールと同様に、設計で指定された性能を満たしているかを確認し、現場の施工条件に合った製品を使用することが重要です。
排煙ダクトを保温するときの注意点

排煙ダクトを保温する際は、保温材の種類だけでなく、厚さや耐熱性能、周囲との納まりまで確認することが大切です。
施工前後に確認したい主な注意点は、次の通りです。
- 設計図書や仕様を確認する
- 必要な保温材の厚さを確認する
- 使用する保温材の耐熱性能を確認する
- 防火・耐火上必要な措置と混同しない
- 接続部や支持部まで適切に施工する
以下からは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
設計図書や仕様を確認する
排煙ダクトを保温する前に、設計図書や特記仕様書、施工要領書などを確認しましょう。
排煙ダクトは、設置場所や建物の用途、防火区画との位置関係、屋内・屋外の違いなどによって、必要な保温材や厚さ、施工範囲が変わることがあります。
特に改修工事では、既存のダクトと今回の工事で求められる仕様が同じとは限りません。
既存と同じ材料や厚さをそのまま使用するのではなく、現在の設計図書を基準に確認することが重要です。
図面と現場の状況が合わない場合や仕様がはっきりしない場合は、現場だけで判断せず、設計者や監理者に確認したうえで施工しましょう。
必要な保温材の厚さを確認する
保温材の厚さは、以下の要素に合わせて決めます。
- 使用する材料
- 設置場所
- 周囲の温度・湿度
- 必要な保温性能
保温材は厚ければよいわけではありません。
必要以上に厚くするとダクトの仕上がり寸法が大きくなり、梁や配管、ケーブルラックなどと干渉することがあります。
一方、厚さが足りなければ、必要な保温性能を確保できない可能性があります。
そのため、設計図書で指定された厚さを確認するとともに、保温材や外装を施工したあとの寸法まで考えておくことが大切です。
特に天井裏やシャフトなどスペースが限られる場所では、他設備との距離や点検スペースも施工前に確認しましょう。
使用する保温材の耐熱性能を確認する
排煙ダクトは火災時に使用する設備のため、保温材が想定される温度条件に対応できるか確認する必要があります。
同じロックウールやグラスウールでも、製品によって使用できる温度や密度、表面材などが異なります。
そのため、材料名だけを見て使用できると判断するのは避けましょう。
また、確認が必要なのは保温材本体だけではありません。
接着剤やテープ、表面材、外装材なども含め、施工に使用する材料全体が必要な条件に合っているかをチェックすることが大切です。
選定する製品の仕様書や施工要領を確認し、設計で求められる性能に合った材料を使用しましょう。
防火・耐火上必要な措置と混同しない
排煙ダクトの保温と、防火・耐火上必要な措置は別のものです。
保温は、ダクトから周囲への熱の移動を抑えたり、結露を防いだりするために行います。
一方、防火・耐火上の措置は、火災時に必要な安全性を確保するためのものです。
そのため、不燃性のある保温材を施工していても、それだけで必要な防火対策や耐火被覆、防火区画の貫通部処理まで完了したことにはなりません。
施工時は、保温仕様と防火・耐火上の仕様を分けて確認し、それぞれ設計図書に沿って施工することが重要です。
接続部や支持部まで適切に施工する
排煙ダクトの保温では、直管部分だけでなく、フランジや継手、エルボ、分岐部、支持部などにも注意が必要です。
こうした部分は形状が複雑なため、保温材にすき間ができたり、必要以上に圧縮されたりしやすくなります。
施工状態によっては、部分的に保温性能が低下することもあります。
結露対策が必要な場所では、保温材だけでなく、防湿層や外装も途中で切れないように施工することが大切です。
また、点検口やダンパーなど、施工後も操作や点検が必要な部分を保温材で塞がないように注意しましょう。
施工前に接続部や支持部を含めた納まりを確認し、使用する工法の施工要領に沿って仕上げることが重要です。
排煙ダクトには保温材付きダクトを使用する方法もある!

排煙ダクトを保温する方法には、現場でダクトを取り付けたあとに保温材を施工する方法のほか、あらかじめ保温材を取り付けたダクトを使用する方法もあります。
保温材付きダクトを使用すれば、現場で保温材を切断したり、巻き付けたりする作業を減らすことが可能です。
天井裏や狭いシャフト、高所など、作業スペースが限られる場所では、施工の負担を抑えやすくなります。
また、工場などであらかじめ保温材を施工することで、現場作業の省力化や工期短縮、仕上がりのばらつきを抑えることにもつながります。
ただし、保温材付きダクトを使用しても、現場で行う作業がすべてなくなるわけではありません。
ダクト同士の接続部やフランジ、支持部、貫通部などは、現場の納まりに合わせた処理が必要です。
排煙ダクトに使用する際は、保温材の種類や厚さ、耐熱性能などが設計図書の仕様に合っているか確認しましょう。
保温後はダクトの外形寸法も大きくなるため、搬入経路や吊り込みスペース、周囲の配管・ケーブルとの取り合いまで確認しておくことが大切です。
山陰設備工業では、ダクトの製造から保温工事まで対応しています。
規格品の販売に加え、現場の寸法や用途に合わせた特注ダクトの製作にも対応しています。
現場での保温作業を減らしたい場合や、ダクト製作と保温をまとめて依頼したい場合など、排煙ダクトの図面や仕様をご用意のうえ、ぜひ山陰設備工業へお問い合わせください。
排煙ダクトの保温は用途や現場条件に合った方法を選ぼう

排煙ダクトの保温は、設置場所や設計図書、周囲の環境などに合わせて、適切な仕様を選ぶことが大切です。
保温だけでなく、防火上必要な条件や周辺設備との納まりまで確認したうえで施工しましょう。
私たち山陰設備工業では、排煙設備を含むダクト設備の設計から、自社工場でのダクト製造、施工、保温まで幅広く対応しています。
取り付けを自社で行う設備業者向けのダクト製作や、規格品のオンライン販売にも対応しています。
排煙ダクトの製作から保温後の納まりまでまとめて相談したい場合は、ぜひ山陰設備工業へお問い合わせください。

